さかだち日記 第3日目

2018年8月15日
酒を飲まなくとも眠くなる。個人的な発見だ。

女性受けがいい体質だ。話し方なのか接し方なのか、好まれやすい。
酒を飲まない昼間の仕事でも、バーで一人で飲んでいても、そこに女性が登場するとなぜか話しかけられるし、僕からも話しかける。
新幹線のホームで電車を待つ列に並んでいても、降り立った乗客は僕の前を通り抜ける。隙があるのだろうか。

バーカウンターで一人で飲む。女性が一つ席を空けて座っていても4割くらいの確率で半時間後には楽しい会話が弾んでいる。実際何を話したかなんて覚えているはずもなく、自分が人並み以上に受けがいい性質だとも思っていないので、理由が知りたくなる。
男性は酔うと近くの女性にチョッカイを出す。さっきまで難しそうな仕事の話で盛り上がっていた輩どもが、酔った勢いで女性に話しかける。相手からすれば迷惑な輩どもだ。
女性も酔うと近くの、そう隣に座っている初対面なのに意気投合してしまった僕にチョッカイを出し始める。
8割以上の女性が、その日本人離れした筋肉を褒めながら触診チェックを始める。
「鍛えてるの?凄い腕、硬〜い」
硬くなるのは腕だけではない。

鍛えるわけない、憧れは細マッチョなんだから。
そして太ももの筋肉からふくら脛の筋肉をじっくり触診される。
いい気分になっているか?
なる訳がない。モテ願望もないし、ましてや筋肉自慢もしたくない。バーで一人でバーボンやらシングルモルトやらを飲み比べして楽しみたいだけ。でも、会話も同じくらい好き。だから初対面の女性からでも話しかけやすいのか、会話が盛り上がれば僕も楽しい。
会話が好きなだけであって、その先の妄想も肉体的な欲望も望んでいない。第一潔癖気味な体質で、初回からフィジカルコンタクトはしたことがない。自分からは指も触れない。複数回会ってしまった場合は別の話。

性格はボディータッチにも表れるようで、肩をたたくような仕草から始まって脇腹で途中下車。腕を鷲掴みにされて太ももから急行に乗り換えて股座行き。臀部始発の太もも折り返し運転。
特別料金は被服の隙を縫って直行便。
やめてほしい。妄想を現実にしたくない男だっているんだ。

会計を済ませて店を出ると、なぜか一緒に出てくる女性もいる。
「どこ行くの?」
「駅の方だけれど、一緒に行く?」
初対面なのに二人並んで手を絡ませて歩く。
我慢だ、もうすぐだ。

女性が酔いに任せてしなだれかかってくる。長身女性が好きなので、もう少し背を高くしてから来てほしいと言いかけながら寡黙を貫き通しつつ、駅に向かってゆっくりと歩く。
客待ちしているタクシーの先頭を目指して、初対面カップルは恥ずかしげもなく歩く。
タクシーの扉が自動で開く。日本だけのおもてなし、自動扉タクシー。
僕は先に女性を乗せ、立ったまま身振り手振りで自動扉が閉まるようドライバーに伝える。
酔って焦点が合わない潤った瞳の女性が、正気に戻って行く姿を最後まで見ることなくタクシーが走り出す。

セクハラは犯罪だ。