さかだち日記 第21日

2018年9月2日

意志は強いが情に絆される

さかだち解禁デーも無事終わったかのように思えた。
二日酔いだ。明らかに軽くはない。
自分では泡しか飲んだ記憶がないが、どうやら泡祭り後半はエキストラステージでテキーラ祭りがあったようだ。
軽井沢から新幹線に乗り自宅までタクシーで無事に辿り着いたようだが、軽井沢後半からの記憶はいまだに思い出せない。
醸造メーカーに勤める先輩から聞いたので確信はないが、記憶が飛ぶのも急性アルコール中毒の症状の一つだそうだ。そうか、日常的に飲んでいた時は毎晩のように急アルだったのか。

アルコール依存脳かと思っていたが、まだ辛うじて欲求脳を包む理性があるらしく、翌日からノンアル通常運行でライフサイクルは回転を始めた。

今までで一番の記憶に残らない思い出がある。相手から言われたので覚えている気がするが、酔っていたので実際の記憶はない。
プロポーズだ。

もう15年程前だったか定かではないけれど、とにかくプロポーズをしたそうだ。
相手は幾つか年下の未婚女性。
既婚者に膝まづくほど根性は座っていない。
丁度、前妻との決着がついてお世話になっている人から祝杯を上げられてから数年後、以前から一緒に飲みに行ったり、テーマパークへ行ったり、旅行をしたりする程度の仲だった彼女は美人。しかも細身の美人だ。
どの程度の美しさかというと、新宿有名百貨店の化粧品ブースで買い物ついでに化粧をしてもらった帰り、新宿駅に向かって歩行者天国の道を二人で歩いていると、前を通り過ぎるカップルの男性や二人組の男性達のほとんどが僕たち、いや彼女にくぎ付けなのだ。
言葉では知っていたが、人間くぎ付けになると、ああも頭の回転が止まっているかようなアホ面をするもんかと感心した程だ。

当然だが、性格も合っていて共感を得たり、思いやりを感じることができる相手だった。
酒についてもだ。
当時、東陽町から23区の西側に引っ越したばかり、近所にとてもやる気のある名前の小さなスーパーがあった。
引っ越してからというもの、彼女はそこのスーパーでレジ袋一杯に買ってくるものがあった。
僕の好きな夜の食材、1Lのジャックダニエルズと1kgの柿ピー。
お互いに、お互いが驚くほど飲む。二人で3晩もあれば1Lの重たいジャックダニエルズは、二本指で摘まんでごみの集積所に運ばれるほど軽くなり、その晩にはまたレジ袋に重たい瓶を詰め込んで涼しい顔に汗をにじませ彼女が運んでくる。
酒好きは、どうしようもないくらい酒のために努力する。

毎晩のように飲み、忘れ、飲みを続けていたある日、何を思ったか僕が言ったらしい。あの言葉を。保証もできないような曖昧な言葉を約束に使ったそうだ。
幸せにすると。
翌日、まだパカパカする時代の携帯にメールが入る。
「昨日のは本当?」
そんなに飲んでなかったよ、まだ残っているはずだ。
「昨日のって何?」
人間として認められるような行いはしていないが、人類、ヒトとして最低だと言われたのは初めてだった。
記憶が残らないのは、急性アルコール中毒の影響だそうだ。
先輩が言っていた。

 

傷つけてごめんね、と言ったときはデカいこいつで乾杯!!
ジャックダニエル ブラック 3000ml